青年・沈知夏は姑蘇の刺繍工房を訪れ、蘇蘭のもとで両面刺繍を学び始める。二人は共に長くしまわれていた蓮模様の古い刺繍を紐解き、針筋や配色に秘められた技を解き明かしていく。糸を分け、水紋の色階を調え、廊下で自然光を借りて明暗を整えるうち、沈知夏は次第に早さを求める心を手放していく。師弟は表裏両面の針跡と余白を繰り返し磨き上げ、実景に即して色を採り、隙間を無理に埋めないことを学ぶ。蓮と水の刺繍が完成し額装されると、沈知夏は留まって腕を磨くことを決意し、蘇蘭が新しい白い布を差し出す。二人は一針で筆を下ろし、この江南の刺繍芸のゆるやかな修行を継いでいく。